子供の頃から、言葉で自分を表現するのが苦手だった。
思っていることをうまく話せなくて、もどかしい思いをすることが多かった。
だから、なのかもしれない。
私は、言葉の代わりに「服」で語ることを選んだ。
「愛の戦士」。
それが、学生時代にコンテスト出品用に制作した作品のタイトルだった。
太陽の赤。草木の緑。光の黄色。水の水色。
そして、大地を白いキャンバスに見立てて、
自然界を構成するすべてのエレメントを一着に取り込み、「愛」を造形として表現した作品だった。
当時、強く影響を受けていたのは、ヴィヴィアン・ウエストウッドのバッスルスタイル、そしてジョン・ガリアーノのアバンギャルドな発想と造形美。
だから私は、普段着られる服を作ることには、まったく興味がなかった。
普通のスカートやワンピースの製図を引くことよりも、どんな線を引けば立体的な造形になるのか。
そのことばかり考えて、形にすることに夢中だった。

「愛の戦士」は産経新聞社賞を受賞し、学校の研修でパリとロンドンを訪れることになった。
初めて見る海外。
初めて降り立つパリ。
しかも会場は、エッフェル塔。
そこで開かれたファッションショーで、フランス人モデルが私の作品をまとい、ランウェイを歩く姿を見た。
言葉にならないほどの感動だった。
「服で、世界平和を伝えたい。」
今思えば、ずいぶん大それたことを、大真面目に考えていたと思う。笑ってしまうけれど、当時の私は本気だった。
そしてもう一つ、忘れられない出来事があった。
言葉の通じないモデルに、自分でデザインし、作った服を着せる時間。
何を話しているのかは分からない。
それでも、私の服の造形やモチーフを、彼女が面白がってくれているのは分かった。
表情だけで、十分だった。

「ああ、言葉がなくても、伝わるんだ。」
子供の頃、あんなに苦手だった「自分を表現すること」。
それが、服でならできるかもしれない。
そう思えた瞬間だった。
言葉の壁を超えて感じた、世界。
この日を境に、私の中で何かが動き出した。
——もっと知りたい。
その好奇心が、今の私の出発点になっている。
